大切なおじさんの呪い
これを見ている方は不眠症になった事があるだろうか
わたしはない
いや、正確に言うとなかった、だ
かつてのわたしは自分はそこそこに心が強く、例え何かが起きて眠れない日があろうともそれが続く事など自分には有り得ないと思っていた
今日は生まれてから2〇年どこでもすぐに寝れたわたしが生まれて初めて何日も眠れなくなり、睡眠補助剤を買う羽目になった現在進行形の地獄の話をしたい
最初の地獄は2020年4月中旬、緊急事態宣言による引きこもり生活真っ只中の時だ
始まりは唐突だった
夢の中でわたしの命より大切な中東系の知らんおっさんが死んだ
何を言ってるかわからないと思う
わたしにも分からないからだ
砂吹雪舞うどこかの国の戦場真っ只中、兵士のわたし(しかも男)にとって命よりも大切な親友である外人のおっさんが敵に撃たれ、わたしは血塗れの彼を抱えて泣きながら衛生兵を呼んでいる
わたしもそこそこの怪我をしているのだが、「わたしはいい!彼を!彼を早く助けてくれ!!」と叫び散らしている
しかし誰が見ても、彼にもう助かる術はないのだ
そんな事自分自身とっくに気づいている、でも心がそれを拒否する、冷たくなる彼の体を両腕に感じていながらそれでも尚、衛生兵を求め叫び続ける
彼がいなくなったら生きる意味がない
彼のいない世界に価値なんてない
いやそんな利己的な事よりも、何よりも、わたしは世界中の誰よりも彼に幸せになって欲しかったんだ
そう思えるただ1人の存在だった
その為ならなんでもするつもりだった
いつか来る最期の日まで、彼の笑顔が絶え間なくありますように、耐え難い痛みもどうしようもない悲しみも、あらゆる絶望がどうか彼にだけは立ちはだかりませんように、その為に自分は犠牲になってもいいから、どうなってもいいから、だってその為に生きていると思えたんだ、それだけが願いだったんだ、これからだったんだ、この徴兵さえこなして国へ帰って、そこからまた彼のそばで人生をやり直すつもりだったんだ、幸せを見届ける予定だったんだ、それが人生の意味だったんだ、だから彼だけは、どうか、どうか、自分はどうなってもいいから、彼だけは助かって……
誰?
どうしていきなりこんな壮大な夢を見たのかまったくわからない
寝る直前は性行為がメインテーマのハートフルコメディな学園系海外ドラマしか見てなかったので、セックスもハートフルもコメディもかすりもしないこの夢がその影響を受けたとは考えにくい
そして何よりも、わたしは誰かに対するここまでの想いを人生で1度も抱いた事はなかった
自分の中にこんなにも大きく愛に満ちた感情があった事に驚きだ
何があってこんなインドカレーのパッケージみたいなおっさんに対し猛烈な愛を抱いていたのか甚だ謎ではあるが、とにかく目を覚ますと枕には涙で出来たシミが拡がっており、心に芽吹いた絶望と悲壮感はその後もしばらく胸の中で燻り続ける事となった
そしてその夢はその日だけでは終わらなかった
次の日も、その2日後も同じ夢を見て泣いて目覚めたのだ
まったく同じシチュエーションで、心なしか大切なおじさんの眉や髭が徐々に伸びており初日より顔が濃くなっていっているのがまた恐ろしい
わたしはというと衛生兵に泣きながらすがり付いて土下座をし、お願いだから助けてくれ、なんでもするから…と懇願するところまで行っている
何…?
何かの暗示なのか…?
予知…?
呪い……?
……呪いだ
呪いだろこんなの、知らん内に中東系のおっさんを無碍に扱ったりしてしまったのかもしれないし、中東系のおっさんの逆鱗に触れる何かがわたしの言動の中に潜んでいたのかもしれない、そうでもないと説明がつかない
一応精神病の予兆も疑い、精神保健福祉士の資格を持つ姉に相談を持ちかけたりもした
匙を投げるまでが秒
最終的に話を聞いてアドバイスもくれたが解決には至らなかった
とにかく、わたしが寝ると自分の命より大切な中東系の知らんおっさんが死ぬのだ
そしてその度にわたしはかつてない悲哀に打ちひしがれて世界に絶望するのだ
どうしてこんな事になったんだ
夢の事を忘れて過ごしている日中でも、胸のどこかで燻っている愁傷は消えることはない
大切な人を亡くしたという喪失感が常にそこはかとなく付きまとう
ついには眠りにつくのが怖くなり、目を瞑っても寝付けない日々が続いたので、ブチ切れながら半目で薬局に行って睡眠補助剤ドリ〇ルを生まれて初めて購入する羽目になる
ドリ〇ルは効果てきめんで、レム催眠を通り越して深い眠りにすぐ誘われるので夢自体を見ることはなくなった
そして使用して数日経つと薬なしでも眠れるようになり、その頃には悲しみも薄らいであの夢は見なくなっていた
本当に救世主のような薬である
パッケージに描かれている目ギンギンの猫のイラストを馬鹿にしたことを反省したい
普通の楽しい夢が見れるようになったわたしは、普段通り夢の中でおジャ魔女どれみの一員になったり超能力を手にし人々の賞賛を集めたりなどして楽しく生きれるようになった
それでも時々、酒をしこたま飲んで寝ると大切な知らんおじさんが腕の中で死んでいく夢を見て泣きながら目を覚ます事があったが、この頃になると負の感情は一時的に沸いてはすぐ消えるので気にしないようになっていた
時は流れ、1年近くが経った2021年2月上旬のある日
酒を飲んでもいないのに泣きながら起きた
夢の内容は覚えていないが、この絶望感と喪失感は確実に「大切なおじさん」である
また奴が現れたのだ
またわたしの腕の中で死んだのだ
そしてこの日の愁傷はいつものように霧散せず、夜になってもわたしの心に居座った
1日が終わり布団に入っても胸の奥の深い悲しみは消えない
また、1年越しに不眠の日々が始まったのである
また、薬局で目バチギマリ猫のパッケージを探す羽目になったのである
こいつも中東系の大切な知らんおじさんを失ったのだろう
そんな顔をしている
一体わたしが何をしたと言うのだろうか
昔から戦争映画を好んでよく観るのでそれが影響した可能性もあるが、どうしていきなりその呪いにかかってしまったのかは未だに分かっていない
ちなみにその日寝る前に観た映画は、狂った全裸の老婆が夜中に四つん這いで家中を駆け回るホラーなのかスリラーなのか分からないジャンルの物で、まったく関連性もなく再発の原因も謎のままだ
せめて狂った全裸のババアが出てきてくれよと尋常じゃない思考でないと出てこない願いが過ぎったりもした
非科学的なものをあまり信じていなかったのだが、あまりにも怖いのでスピリチュアル夢診断のできるサイトで調べてみると
「大切な人が死んで泣く夢はその相手との関係の向上を示唆しています」とあった
一体誰との関係が向上するというのだろうか
今またドリ〇ルのお陰で眠れているが、どうせまたいつかこの夢を見て眠れなくなる日が来るのだろう
今普通によく眠れている人達も気をつけて欲しい、中東系の大切なおっさんの呪いはどこにトリガーがあるのかわからないのだ
そして何か解決法を知っている人がいたらお願いだから連絡して欲しい
その為なら泣きながら土下座し足にすがり付いて懇願する事もやぶさかではない
夢の中で衛生兵に対して何度もやっているので、恐らくフォームは完璧である
助けてください
余談だが、3日前急に高校時代の友人から何度もお前の怖い夢を見て泣いて起きたと連絡があった
数年ぶりの連絡にしてはパンチが効き過ぎている
やっ優しっ……
わたしも誰かにとって中東系の知らんおじさんになる番が来たのかもしれない
次に泣きながら起きるのはあなたかもしれない
コーギー犬カフェ
先月のハロウィンの日に、後輩が唐突に「福岡で開催される嵐の展覧会にヤケクソで応募したら当選してしまった、チケットは1枚なので自分しか入れないが道中が寂しいので福岡まで着いて来たらどうか」と、わたしに対する慮りゼロの提案をしてきた
えっお前…そのイベントの間のわたしの事を考えたりしてみた……?とは思ったが、いや待てよ福岡には確かコーギー犬カフェがあったな…と考え、とりあえず暇なので同行する事にした
わたしは生きとし生けるものの中でウェルシュ・コーギー・ペンブロークを1番「良い」としているのだ
今日はそのコーギー犬カフェのレポをしていきたいと思う
まず最初に衝撃的な事実なのだが、福岡県にコーギー犬カフェなんてものはなかった
長崎県だった
どこで目にした情報だったか覚えていないのだがまあ恐らくツイッターなどで「九州にある!」とチラ見したのだろう
わたしは九州全てを統合し福岡として脳内に保存していたらしい
「福岡 コーギー犬カフェ」でなにもヒットせず福岡に行く理由がなくなった事に気付いたのは後輩がホテルや飛行機を手配した後だった
MEは何しに福岡へ…?
悔しいので長崎まで行くことにした
わたしは運転免許取得と就活以外の行動力には定評のある女なのだ
後輩が予約したホテルの最寄りからコーギー犬カフェのある場所まで、新幹線と電車と徒歩で3時間程である
いや遠っ
往復6時間に加え学生時代の1ヶ月の定期代より高い交通費がかかるが、コーギー犬に会う為なら安いものだろう
事前に予約できないか連絡をしてみたところ、予約制ではない上に土日はかなり混むことが予想されるとの事だったので、開店1時間前には着くように5時起きが決定した
何故ここまでコーギー犬にこだわるのかを先に説明しておくと、見た目が完璧過ぎるという理由以外に小さい頃から飼っていて死ぬほど溺愛していた実家の愛犬がウェルシュコーギーペンブロークだったというのがある
5年前の12月に死んでしまったが、未だに月に数回は必ず夢に出てくるくらいわたしの潜在意識を侵食している可愛い奴だ
その後から現在進行形で何匹か犬は飼っているが、初代飼い犬のコーギーに勝る者はいなかった
どれほど溺愛していたのかというと、外で「服になんか犬の毛ついてるよ」と言われて「あっみーちゃん(愛犬)の毛だ!ムシャムシャ!!」とその場で食って友人を失いかけた事があるくらいだ
11月下旬の来たるその日、本人ら不在の嵐の展覧会の為だけに千葉からやって来た女と、コーギー犬カフェの為にここから更に乗り継いで長崎まで行く埼玉の女、計2人の狂人(くるんちゅ)が福岡の土地へ降り立った
観光もせず長浜屋のラーメンだけ食べてまっすぐホテルへ戻る
いつも朝寝てるから眠れる気がしないよ〜😭と寝る直前まで騒いでいたが、いざベッドに入ると即寝た
当日は7時半の特急に乗り、そこから電車を乗り継いでコーギー犬カフェの最寄りである長崎県の川棚駅まで向かう
川棚駅は二両編成の電車しか来ないタイプの小さな駅で、改札もなかった
駅員は見当たらず、切符はこちらへお入れくださいと小さなポストがあるだけだった、あれで成り立つのか…?
駅前にはタクシーが何台かあったが、早く着きすぎた気がしてきたので30分ほど歩いて向かう事にした
海が綺麗だ
折角なので死んだ愛犬プレイリストを流しながら歩いた
わたしは昔から恋愛ソングを愛犬ソングだと思って聴くキモい傾向にあるのだ
愛犬が死んでからは失恋ソングがめっぽう染みるようになったが、宇多田ヒカルの真夏の通り雨などはもう本当に秀逸だ
”夢の途中で目を覚まし 瞼閉じても戻れない
さっきまで鮮明だった世界 もう幻”
ウッ😭😭みーちゃん……(愛犬)
”ずっと止まない、止まない雨に
ずっと癒えない、癒えない渇き
ずっと止まない、止まない雨に
ずっと癒えない、癒えない渇き……”
ウワーーーーー!!!!😭😭😭😭😭
足が疲れてくる
何故10センチヒールのブーツを履いてきたのだろうか
ヒッチハイクでもしようかと本気で悩み始めた時、ついに看板が見えた
コレヤ!!!!!!!!
急な斜面をエッサホイサと登った先のフェンスの中に、沢山のコーギー犬がいた
コーギー犬が、いたのだ
足が震えて息が出来なくなる
コーギー犬、いっぱいおる!!!!
掃除をしているおじさんに聞くと、まだ早いけど掃除が終わったら入っても良いよとの事だったので30分程近くで海を眺めて時間を潰した
混雑を危惧して早めに来たが、早すぎたようでわたししかいなかった
海を眺めながら落ち着こうと姉に連絡する
その前の会話は気にしないで欲しい
11時10分前にもう入っても良いと言われたので、フェンスを開けてついに中に入る
ガシャン
ワッ
ドワワワ
視界がコーギーでいっぱいになった
360度どこを見てもコーギーで溢れてる
目測ではあるが20匹以上はいたように思う
こんな天国が本当にあったのか、、!!
とにかくみんな吠えまくって短い足で地面を蹴り、おしりを惜しみなくプリプリ振りながら走り回っている
生き物として非の打ち所がない
完璧すぎる出で立ちだ
ほとんどの子は人に慣れているのか、勢い良く近寄った後に軽く匂いだけ嗅いでスルーされる
塩対応も可愛い!!!!!!
人懐っこい子はしゃがんでいるこちらの横をドシン!と陣取って、撫でろと顎で催促してくる
傲慢さが可愛い!!!!!!!!
さっきまで真夏の通り雨が静かにループしていたわたしの脳内は一瞬にしてウルフルズのバンザーーイ!!君に会えてよかった!!このままずっと!!ずっと!!死ぬまでハッピーーー!!!!に支配される
ここにはこの世の「全て」があった
全てが充足していた
感動のあまりしばらく声が出なかったが、やっと出たコーギー犬に対する第一声が「あなた…」だった
何…?
もしそのコーギーに日本語が通じていたならかなり怖かったと思う
しばらく外でコーギーを撫でたり愛でたり嗅いだり眺めたりしていたが、混む前に席だけ確保しちゃってくださいと言われたので中のカフェスペースへ行く
カフェ内でもいたるところにコーギー犬が落ちていた
生きててくれてありがとう……
開店から数分後には車が続々とやって来て、飼ってるコーギー犬を連れてくる人なども多かった
敷地内にコーギー犬がどんどん増える
このままでは世界のバランスが崩れてしまうのでは…!?と不安になるくらいのコーギー犬達がここに集まった
これが愛・地球博……と思った
客層としてはコーギーを連れてきた人達が1番多く、その他にも家族連れ、カップルが何組かという感じで、予想はしていたが犬も連れずに一人で来ている人間はわたしだけだった
一番乗りで30分以上前から来て1人涙ぐみながら脇目も振らずコーギー犬を愛でていたのでかなり気色悪かったと思う
メニューを頼み、またコーギー犬を愛でる為外に出る
フラッフィー(毛足の長いコーギーの種類)を連れた方がいた
死んだ愛犬もフラッフィーだったのでフラッフィーに対しては格段に愛が深い
フサフサと長い毛をなびかせながら走り回るフラッフィーの荘厳な出で立ちは人々の心を狂わせる美しさだが、短い足が絶妙なギャップを生み出していて可愛さも忘れていない
ここにもし滝沢カレンがいたら「まるで、自分はライオンだ!とでも言いたげな風貌ですが、如何せん脚が短いので、どうしても、ふふっ、滑稽の域を超えません」とでも実況していただろう
フラッフィーが近付いてきたので、ここぞとばかりにコーギー犬ナデナデテクニックを披露する
わたしの手は14年に渡る愛犬みーちゃんへの撫で回しのお陰で、コーギー犬の掻いて欲しい場所を適切な力と動きで刺激する技に長けているのだ
ずっと誰の元にも着かなかったフラッフィーちゃんがわたしの膝元にぴったり座り込んで気持ち良さそうに足を動かしている
わたしの手はこの為にあったんだ、と理解した
それまでツムツムランドで高得点を狙う為の右手だと思っていた
頼んでいたトルコライスができたというのでカフェ内に戻る
正直食べ物にそこまで期待していなかったのだが(とても失礼)、これがめちゃくちゃに美味しい
柔らかいお肉も味の付いたごはんも頭から食べられるエビフライもクリーミーなスープも、添えてあるサラダに至るまで全てが本当に美味しい
カフェ内が犬の獣臭で溢れていることなんて気にならない美味しさだ
それに加えて椅子の下には太っちょのコーギー犬が人目を気にせずくつろいでいる
ユートピアってここの事だったんや…と感動した
せっかくなので追加で長崎名物であるというミルクセーキも頼んだ
こちらもめちゃくちゃに美味しかった
地元の潰れそうなタピオカ屋はこれをメニューに入れた方がいい
残念ながらそろそろタイムアップだ、嵐の展示会から後輩が帰ってくる3時間前にはここを出なければならない
何故ならここは長崎で集合は福岡だから……
ミルクセーキに舌づつみを打ちながらタクシーを呼ぶ
待っている間もコーギー犬を愛でていた
お会計の時もスタッフの方はとても丁寧で、「混んでてゆっくりできなかったでしょう、すみませんね、また是非来てくださいね」と声をかけてくれた
接客まで完璧とは何事だ
もうほんと絶対にまた行く
外は雨が降っていた
雨に濡れていてもコーギー犬は滞りなく可愛くて偉い
全身犬の毛だらけで頭の先まで獣臭プンプンだったので、死ぬほど申し訳なさそうな顔でタクシーに乗り込んでおいた
出発しても振り返って最後までコーギー犬を目に焼き付ける
コーギー犬を創造してくれた神よ、大地よ、宇宙の全てよ、ありがとう、ありがとう、、
その後無事に特急を乗り継いで福岡に戻り、わたしより1時間以上早く帰ってきてホテルで昼寝をしていた後輩に詫びを入れシャワーを浴びて服も着替えた
この頃にはコーギー犬に塗れたという満足感よりも、「みーちゃん(死んだ愛犬)に会いたい😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭」という悲しみが勝っていてシャワーを浴びながら少し泣いたしその後浴びるように酒を飲んだ
そして飲みすぎて記憶を飛ばして次の日の飛行機内のトイレで限界まで吐きまくり、CAさんにハーブの飴詰め合わせをいただく羽目になる
記念品
東京に戻って帰宅しても夜まで吐き気と頭痛は続き、生死の境をさ迷ったわたしはもう二度と酒を飲まないと心に誓ったのだ
この誓いを立てるのは人生で380回目くらいだが今回は本当なのだ
本当に飲まないのだ
こんな苦しい思いをしてまで酒を飲む意味って何?絶対だし汁とかを飲んでた方がいいやろ
人間は愚かなのだ
酒は最低だがコーギー犬カフェは本当に最高だった
今度はコーギーが好きな友達も誘って行ってみたい
難点としてめちゃくちゃに遠いのと、カフェ内の獣臭がかなり濃くて食欲が失せる人がいるかもしれないという点がある
顔の側面にうんこがベッタリ付いたコーギー犬が椅子の下で寝ている環境でご飯を食べる事になるので、そこが大丈夫な人は是非今度一緒にお願いします
まあごはんなんてどうでもいいな!
コーギー犬さえいればなにもかも大丈夫!
せ〜の!
ハッピーハッピーイエ〜〜〜イ!!
(このピュージャガのネタがわかる方は連絡下さい)
おしまい
9月2日富士山登ったよ記録
結論から言うと、富士登山に最も必要なのは軍手と梅シートである
日本一の山に登りてぇな…という安直な野望から始まった今回の富士山登山計画
前知識は「高山病というのがめちゃ頭痛くてやばいらしい」「てっぺんめちゃ寒いらしい」くらいである
その知識から浮かぶ必要な装備は暖かい服とロキソニンくらいなのでまともな準備もしておらず、天気の都合から予定前倒しで「今日の夜から行くかあ」と突然決まるもまったく焦らなかった
大親友と富士山の上でおにぎりをぱっくんぱっくんぱっくんと食べたいという密かで可愛い願望があったラブリーわたしはお出汁で炊いた明太子おにぎりを2つ握ってカバンに入れた
直前に安く買ったブーツとズボンと上着を着込んで迎えに来てくれた相方の車に乗り込むと、あっちも直前にハードオフで購入した薄手のジャージを用意しており買ってから女性ものだと気付いたと落ち込んでいる
着て腕を伸ばすと七分袖になっていた
何故買う前に気づかなかったのか
夜に出発し近くで3時間仮眠を取ってバス乗り場へ
バス乗り場から見えるドアップの富士山はさほど大きくは感じず、「30〜40分くらいで登れそうじゃね?」とクソ舐めた会話を交わす
そしてバス停手前で「やめよう弾丸登山」の看板を見つけ、動揺しつつも煽り返しておいた
今の時期はマイカー規制らしいのでバスで5合目まで向かう
たぶん40分くらい乗ってたのだけど寝てたら体感5分で着いた
5合目でソーセージ買って食べたり深呼吸して空気に慣れたりしてそして見つける「やめよう弾丸登山」の看板
7時45分、弾丸登山スタート
5合目を進んでいくと朝日を拝んできたであろう下山者達がぞろぞろと降りてきてすれ違う
全員ほとんど会話がなく、口は半開きで目が死んでいる
進撃の巨人1巻で壁外から戻ってきた調査兵団を見ているエレンの気持ちになった
英雄の凱旋だ!
1人のおじさんが「世界中の痛みが俺の膝に集まってきている」とボヤいていたのが印象的だった
そして気のせいであって欲しいのだが1人の若い青年にすれ違いざまにがっつり目を見ながら「地獄を見ろ…」と言われた
そんな…
スタートしたばかりでまだ登山の辛さを知らないわたし達はガムを噛み手をポケットに突っ込みニコニコ会話しながら歩いており、ついでに恐らくカップルとして見えていたのだろうから苛立つ気持ちは分からなくもない
にしても言い過ぎだろ
ハイキングコースのような優しい山道を進む途中、ここから先登ったら電波なくなるのでは!?と危惧したSNS依存の私たちは端に寄って急いで行く前の気合いツイートする
(後に9合目までばっちり電波がある事を知る)
登り始めて10分、下山してきてる人々と凄いすれ違うんだけどみんな顔死んでて怖いし聞き間違えでなければ今若い男性にすれ違いざま「地獄を見ろ…」と言われた
— フォイフ (@tintinfoi) 2019年9月1日
死ぬ前にどうしても伝えたかった事
6合目の途中で開けた広場のような場所に出る
入山料に協力したりヘルメットを借りたりする小屋があり、その横に見つける「やめよう弾丸登山」の看板はもうスルーを決め込んだ
中国人集団が飛ばしていたドローンを眺めながら最初の休憩をとり、進む
6合目からやや急な道を強いられるのだが、いかんせん登り始めでウキウキモードなので2人ともはしゃいでおり、いかに相手を笑わせて体力を奪うかに重点を置く道であった
そして登ってしばらくしてから見た看板の「山頂まで目安333分」の文字にメンタルを殴られる
333分?途中トイマニにでも並ばされるんか??
しかし2人とも楽観主義なので「いやこれは後期高齢者が死ぬほどゆっくり登った場合での話だろう」と結論付け、変わらず歌を歌いながら登る
この時点でも既に足は痛く息も切れているのだが、山の綺麗な景色と空気、普段味わえない非現実的な状況に気分は高揚しており、何よりも途中で食べた梅シートが世界一美味しすぎたので、まだ疲れは感じていなかった
- 出版社/メーカー: 稲葉ピーナツ
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梅シートは偉大だった、あまりに美味しすぎた
すっぱすぎず塩分と甘さの絶妙なバランスが動き続ける身体に染み渡る
薄いので登りながらも食べやすく酸素を取り込む邪魔にもならない
1枚食べる毎にHPの著しい回復を感じる
何の気なしに持って来たものだがこんなキーアイテムになるとは…!
わたしが1人で食べ尽くすことを危惧したらしい相方に「これは俺が管理する」と言われて黙れやブスこれわしが買って持ってきたんやぞ!!とキレたのも今はいい思い出だ
7合目から突然現れる意味のわからない岩肌
わたしたちはこれを道とは呼ばない
脱走した捕虜とかが逃げる際に仕方なく登るやつジャン…と思った
戦争映画ばかり見ていると発想が凝り固まる
進むために人間の尊厳を捨て四足歩行を余儀なくされた
途中から付け始めた滑り止めつき軍手にここに来て大感謝である
昨日ダイソーをぷらぷらしてるときなんとなく買っておいて良かった…下山してから考えても確実に必需品であった事は間違いない
2つ買ったので相方に分けてやったが、彼はこれがなかったら死んでいただろう
一生このネタで揺すろうと思う
岩にしがみつくように登る時間が続く中でふと後ろを向くと雲が目線の下にある。雲の上で断崖絶壁にしがみついているのかわたしは!馬鹿か!?漫画研究部だった陰キャやぞ…
空があまりにも綺麗で新海誠の描く世界のようで感動した
7合目に唐突に鳥居があったので手を握りしめ祈りながら「今から晴れるよ!」と言ってくぐった
前の月に天気の子を観たばかりであった
今のところ天気は普通に晴れである
前にいたパリピのような若い男集団に「いや晴れてるやんw」というクソつまらんド正論突っ込みをもらったがスルーした
ちなみに新海誠の作品はさして好きではない
8合目は一生続いた
人生のほとんどを8合目で過ごしてきたかのような錯覚に陥る
登っても登っても8合目である
何時間も登り続けもうすぐ9合目かなと思って見えてきた看板を覗くと「本8号」とある
???
何?今までの8合目は偽物だった???
本8号を過ぎしばらくして見えてきた小屋に8合目終点の大きな文字を確認
延々と続いた8合目の終わりをやっと感じて少し安堵する
そしてその後も死ぬ気で登り続け見えてきた小屋の看板に9合目の気配を感じて覗くと
「8合5勺」であった
マジで何なの?????????????????????
ここでの体力の消費はかなりのものだった
この辺りから無心でただ手足を動かし続ける作業が続く
マジでしんどい…何故こんなしんどい事してるんだ…?
ただ定期的に「行くぞブス!」「うるせぇブス!」「大丈夫かブス!」「頑張れブス!」とお互い声を掛け合う事によって士気を保つ事が出来た
これは登山10時間中ずっと続けていたわたしたちの互いへの鼓舞なのだが、怒りや笑いが生まれメンタルの維持にかなり役立つ
怒りが大半ではある
途中の休憩所で分け合って食べた日清カップヌードルが美味しすぎた
泣きそうになった
500円という狂った値段だったがその価値はある
長い8合目でも何度か鳥居をくぐる機会があり、その度に天気の子ごっこをしていた
してもしなくても晴れである
やっと9合目に着いた
看板には残り400メートルとある
400!チョロ〜!すぐやん!ガハハ!!と何もかもを舐めてかかる2人の悪い癖がでる
結果的に9合目は物凄くキツかった
距離にしたら8合目よりも断然短く7合目程ひどい岩場もなかったのだが、どこよりも1番キツかった
今まで何時間もの疲労と股関節の痛み、加えて冷たい突風と迫り来る雲、顔面が砂でジャリジャリになり髪もガサガサ、何もかもが何をするにも最悪のコンディションである
少し歩いては休憩、少し登っては休憩、物凄く小さな歩幅でスローモーションのようにゆっくり歩く
定期的に現れる岩場では手で太ももを持ち上げながら少しずつ登った
梅シートがなかったら頑張れなかったかもしれない
休憩をとると直後はイエ〜イ!と体力が回復してサクサク歩けるのだが、休憩効果は毎度10秒で終わる
10秒後には死者の行進のようなスタンスに戻る
頂上はもう見えているのだがまったく進まない
も〜!泣いちゃうぞ〜!
泣き顔で休むわたし
死体のような相方
このあと「壁面に立つヤギごっこ」をすることで精神を立て直す
唯一調べた高山病対策を信頼してあまり食べ物を食べないで登ったのだが、完全に愚策であった
カロリーの消費が激しいのでめちゃくちゃお腹が空く
いや正直わたしはそこまででもなかったのだが、相方の空腹具合は相当のものだったらしい
先程のカップヌードルで接種したエネルギーも一瞬で消費してしまったようだ
遠足気分で臨んだわたしは鞄にプリッツやうまい棒などのおやつを仕込んでいたので分けてあげた
この先一生わたしには頭が上がらないらしい
絶対嘘だと思う
そこで食べたプリッツサラダ味の美味しさたるや、到底言葉では言い表せるものではなかった
「旨み」の理解が深すぎる天才が作ったのだろう
何度も休憩を挟みゆっくり進んでいく
鳥居の度に何度も今から晴れるよ宣言していたにも関わらず、この時点から雲がかなり視界を遮り霧で真っ白状態だった
不意に道に石の階段があり、登ると左右に狛犬の像のようなものがある鳥居が見えたので毎度の如くふざけて祈りながらくぐる
くぐり終わると頂上だった
しかし視界が真っ白で周りの状況があまりわからず、「あれ?ここ頂上?」「終わり?1番上?」と錯乱した会話しかすることが出来ず、何よりもありえんくらい寒すぎて冷たい突風が顔面にバシバシ当たるのでとりあえず手前の建物に入る
お守りやおみくじが売っており、お賽銭をしておみくじを引いた
今気づいたけどそれ無くした
どんな結果だったのか覚えてもいない、つら…
寒すぎたので近くにあった小屋に入りカップヌードルをすすった
ここに来てカップヌードルの値段が脅威の800円というインフラを叩き出す
鬼か???
小屋にいる人全員疲れ切った顔をしており、自分らも漏れなくそうだった
この時の写真を見ると顔が死にすぎてて笑ってしまう
とりあえずなんか…登頂した…?っぽい…?から?なんか…外で写真撮る…?あとトイレ行きたい……
とまだ半信半疑で白い息を吐きながらクッッッソ寒い外に出る
9合目までトイレ利用料は200円だったのだが、ここは300円だった
そしてどこのトイレよりも汚くて臭かった。マジで汚かった
地獄とは地下奥深くではなく標高3700mにあるのだと知った
リタイアせずに登り切った人々を労る気持ちゼロだと憤慨してしまった
まあ1番来るのが難しい場所なのだから手入れが行き届かないのも仕方がないのかもしれない
汚吐忌劣(おといれ)から出ると相方が上に記念碑みたいなのあるから写真を撮ろうぜと言うので向かう
写真と言っても天気が悪いせいで景色は真っ白で風も強くうまく撮れる気がしない
とりあえず持ち前のテンションで小走りしながら本日5度目くらいの「今から晴れるよー!」を手を組んで叫んだ
晴れた
マジで叫んだその瞬間に雲がサーッと割れて太陽の光が降り注いだ
マジで
今年一の奇跡を起こした
脳内では完全に天気の子のテーマ「grand escape」のサビが流れており、相方は駆け寄りなから「お前が晴れ女やったんかーー!」と歓声を上げていた
わしゃ陽菜さんだったんか…!あんま映画覚えとらんけど消える運命とかじゃなかったろうか…!気のせいか……!
思わぬ奇跡にテンション爆上げしたわたしたちは記念碑にワーッと駆け寄り、一部始終を見ていた親切な登山者が笑いながら写真を撮ってくれると言うのでお願いした
青い空が眩しくて嬉しい
ここに来てやっと、日本一高い山の頂上から景色を見ているという実感が沸いた
わたしたちは遂にやったのだ…!
13時50分、富士山登頂!!
景色が見えるうちに!と少し上がった所に並んで腰掛けてわたしが握ったおにぎりを頬張った
死ぬほど美味しかった
高一の時偶然同じクラスだっただけの2人が、数年後に2人きりで富士山登頂を成し遂げ山頂でおにぎりを食べる仲になるなんて当時の担任には想像も出来なかっただろうなと思う
ちなみに去年は2人でスカイダイビングをしに行って3800メートルから飛び降りる恐怖を同時に味わったりなどした
これらに目的は特にないのが普通に怖い
男女の友情の成立否定派の人間にわたしと彼のこの関係はどう映るのだろうか
少なくとも性愛以外の愛や絆をわたしは感じている
それはッッ紛うことなき確かな友情ッッ!!!!!
感極まり拳でハイタッチをした
その流れで熱いハグを交わした
今後何かがあって縁が切れようとも富士山頂で交わしたあのハグをわたしは生涯忘れないだろう
富士山頂で吸うタバコは最の高の極みなのでは!?と思っていたが酸素が薄すぎて何をしてもライターが付かなかった
マッチもダメだった
当たり前すぎた
火口をぐるっと回ってもっと上まで行く事も出来るらしいが、あと1時間半歩くというのでやめておいた
5合目のメロンパン屋さんが17時で閉まると知っていたからだ
感極まったテンションのまま下山に入る
行きの半分の時間で下れると聞いていたので軽い気持ちで歩いた
普通に大変だった
スキーの要領で左右の足を順番に滑らせていたらたった10メートル程で膝が痛み始めて絶望した
富士山の斜面をジグザグと道が広がり、同じような道を何度も通る
あまりにずっと同じ道で景色も変わらないので、タイムループしているのでは…?と疑ったりもした
思考がオタク過ぎて気持ち悪い
途中何度もライターチャレンジをするがまったく付かない
下っているとはいえ標高3000メートルはあるのだから冷静に当たり前である
とはいえ登りよりも体力の消耗が少なく気持ちも楽なので、下りは終始ぺちゃくちゃと会話をしながら進んだ
曲を流したり歌を歌ったり梅シートを食べたりと陽気に進んでいたが、わたしだけ道中10回以上転んだ
笑顔のまま転んだ
転んだ勢いでそのまま笑顔で転がって下山した方が幸せになれたのではないかと思う
6合目に降りてくるまで100回はライターをカチカチさせたがずっとダメだった
遂に、最初の方で中国人達がドローンを飛ばしていた6合目の広場まで戻ってきた。最初に休憩をした場所だ
これから登ろうとしているツアーの参加者で賑わっていた
迷惑にならないように離れた場所に座り、ライターチャレンジをすると奇跡的に一瞬だけ付いた
即座に相方が煙草に火をつけ、そこからわたしも火をもらい、やっっっっと吸うことに成功する
さして美味しくはなかった
元々わたしは煙草の美味しさが分からない人間なのだ
「今吸ったらエモいのでは…?」という瞬間でしか吸う事はなく、わたしにとって煙草とは状況を感覚的に楽しむ演出でしかないのでまあ美味しく感じないのも想定内である
富士山で空や景色を見ながら煙草を吸う、そのエモい状況を堪能できただけで満足だった
さて、あとひと踏ん張りである
何日か前に富士登山経験者の知人が「登山者はすれ違うと挨拶してくれるからとても気持ちが良く、疲れも爽やかになる」とキラキラ発言をしていたことをここに来て思い出した
今のところ掛けられた言葉といえば序盤の若者の憎しみを込めた「地獄を見ろ…」だけである
(今考えると汚吐忌劣(おといれ)との遭遇を示唆していたのかもしれない)
それではあんまりなので自分から積極的に声をかける事にした
終わりが近いのと何よりも登り切った達成感で心の余裕が半端なく広がっていたのだ
すれ違う人間全員に「コンニチハー!」とよつばと!のよつばの如く声を掛ける
大抵の人は快く返事をくれ、少し驚いた顔をした後に嬉しそうに返してくれる若者などもいてとても気持ちが良い
ただツアーと思わしき20人程の団体がゾロゾロと2列で歩いてきた時は先頭の人にしか声を掛けられなかった
あまりにゾロゾロと歩いているので全員に挨拶するには壊れたラジオの如くコンニチハをかなりの速度で連呼する必要があったからだ
先頭に声を掛けてからは2人とも深く俯いて気まずさに口を結び通り過ぎるまで目を合わせず黙々と歩いた
今回の登山で1番つらい経験だった
ゴールが見えてきた
5合目のお土産屋さんだ
自然にお互い手を固く繋ぎ、両手を上に大きく上げて走っていた
山道と塗装されたコンクリートの地面との間を境界をとし、歓声を上げながら走って跨ぎ、ゴールした
17時34分、富士登山完遂!!
合わせて10時間、本当にやりきった
生きてきた中であまり「めちゃくちゃに頑張った」経験がないわたしにとって、この経験は大きな意味を持つものになった、気がする
曖昧で説明はできないが、人生で1番頑張ったと言っても過言ではないのでそうであって欲しい
自分が誇らしかった
やめよう弾丸登山の看板を煽り散らす俺ら
メロンパン屋さんは17時に閉まると聞いていたが、覗いてみたらまだかすかに残っていた
無事富士山メロンパンも買うことが出来て、完璧すぎるフィナーレだ
隣で相方がコーラをぶちこぼしていたが1ミリも気にすることなく頬張った
ンンおいちっ!!!
丁度日が沈み始める頃だった
5合目からでも景色はとても綺麗だ
新海誠に脳を支配されていた相方は隣で「かたわれ時だ…」と何度も呟いていたが無視をした
胸に来るものがあった
到底言葉では言い表せるものではなかった
プリッツの時に使った表現をここでまた使うと安く感じられるとは思うが、本当にそうなのだ
バスに乗り(爆睡したので体感5分で着いた)暗くなった駐車場を歩き車へ戻る
目の前に止まっている車の周りで若い集団がオロオロとしていた。よく見ると7合目でわたしに「晴れてるやんw」と突っ込みを入れてきたパリピの男の子達だった
車が動かなくなってしまったみたいで、警備員さんを呼んで見てもらうもなかなか上手くいっていない様子だ
わたしは免許も持っていない知識ゼロの人間なのでそれを大変だなあと助手席に座ってぼーっと見ていた
職業が車の整備士である相方は、その様子を横目で見つつも車の横でのんびり着替えていたが、煙草に火をつけ一息つくとスタスタとそちらに向かって行った
そして軽く会話を交わしその車の様子を見てこちらに戻り、自分の車を移動させて何やら接続をし、何やらをやってあちらの車を復活させていた
なにが起きたかわたしには1ミリも分からなかったがかっこよかった
チート能力を隠すやれやれ系の主人公のようだった
昼間は天気の子であるわたしに小馬鹿にしたような突っ込みを入れていたパリピ達が、整列してめちゃくちゃ感謝の言葉を述べながらわたしたちを見送ってくれた
いや確実にわたしに対してではないが
気分は良かった
わたしもそういう状況でそういう立場になってみたかったが、どう考えても特出した特技など口笛くらいしかなく、人より秀でた知識もアベンジャーズに詳しいくらいしかないので、逆立ちしてもどうにもならない願望である
道端にアベンジャーズシリーズ全23作品の観る順番と時系列が分からなくて動けずオロオロしている集団がいたらいいのになと思った
とにかく長くなってしまい、最後もまとまりの悪いままだが、これがわたしの初富士登山のレポートである
危惧していた高山病は全くの杞憂に終わった
何度も休憩を挟み、深呼吸をしたり酸素缶で酸素を取り入れたりしたのが上手く働いたのかもしれない
昔から頭痛持ちだったからこれにはかなり驚いたし安心した
8〜9合目はキツすぎて何度も心が折れかけたが、不思議とリタイアするとか諦めるという発想は全くなかった
お互い常に煽り合っていたので意地と根性だけが何よりも膨らみ、背中を押してくれていたのだろう
帰りの車で振り返ったのだが、相方は「途中マジでしんどかったがお前が距離を置かずに常に後ろを着いて来てるから頑張るしかなかった」と言い、わたしは「相当にキツかったがお前が常に前にいたから女だからって負けたくなくて死ぬ気で着いて行った」と話した
結局は意地と根性である
ここまで全て読んでる人がいるとは思えないが、もしいたら是非、信頼している相手と富士登山に挑戦してみて欲しい
同じ苦労を味わって得た絆は何にも変え難いたい人生の財産になるし、日本一という肩書きの山だけに登り切った感動もひとしおだ
軍手と梅シートと意地と根性があれば、越えられない山はない
軽い気持ちで登ったが、ここまで後を引く感動を得られるとは思っていなかった
あとここまで後を引く臀部の痛みも初めてだ
筋肉痛なのか下山時に転んだ時の打撲なのかは分からないが、明日になっても痛みが引かなかったら整形外科への来院もやぶさかではない
ただ2人とも口を揃えて言ったのは「もう登りたくはない」であった
断れない性格なので今後誰も誘わないでくれ
わたしはもう今回だけで充分だ
高尾山とかだったらワンチャン行くかもしれないがモチベはかなり低いだろう
なんと言ったって日本一高い山を経験してしまったのだから
ドヤ